目次
1、
はじめに
2、
性犯罪や性暴力の加害者に対する処遇
 ・専門プログラムの対象となる性的問題行動
 
・2024年の当ルームの新規相談者のデータ
 
・認知行動療法とは



プログラム対象者や内容、相談回数、費用からお申し込み方法までは、以下のページをご参照ください。
再犯防止のための認知行動療法プログラム・申込ページ


性犯罪をしてしまったことで、あなた(子供も大人も)も悩み困っているとは思います。
ただ、性犯罪はあなただけの問題ではありません。
あなたの一回の行為で被害者の心に恐怖や不安を植え付けてしまったり(トラウマ)、被害に遭う前までは日常生活で普通にとっていた行動をとれなくさせてしまいます。


それともう一つ、あなたのご家族(親、妻、子供)にも、大変な迷惑(時には引っ越しを余儀なくさせられるなど)や心配をかけることになってしまいます。


また、性犯罪は精神疾患(パラフィリア症群)に分類されている問題でもあります。
故に
早めに問題解決に向けての相談に行くようにしてください。



はじめに

当ルームでは、20数年前より性犯罪加害者の再犯防止に向けた認知行動療法プログラムを専門の一つとして行っております。

この20年間は、その月によってばらつきはありますが、毎月5名から多い月は20名程度の新規の方(子供から大人)が相談に来られております。
対面カウンセリングとオンライン・カウンセリングを含めた人数です。


相談に来られている方々は、会社員をはじめ教諭などの各種専門職や自営業など様々な職業の方、また、小学生~高校生や大学生・大学院生、軽度の知的発達症(知的能力障害)や境界知能の子供~大人など、様々な方が個人相談(ご夫婦や親子で相談に来られる方もおられます)に来られております。

また、初犯・再犯の方に関係なく

『「再犯してしまうのではないか」と少しでも不安をお持ちの方』
『再犯してしまった結果、奥さんをはじめ家族など多くの大切なものを失ってしまった方や失いそうな方』
『性非行をしてしまった子供と子供の行為に対してショックを受けている両親』
『性に関する罪を犯した軽度の知的発達症知的能力障害<知的障害>)の子供から大人の方とその家族』
その他にも性犯罪・性暴力の加害行為について悩まれていたり、困っておられる本人及び家族は、なるべく時間をかけずに当ルームまたは、専門の心理相談機関(医療機関を含む)に相談に行くようにしていただきたい。

ここでの専門の心理相談機関(医療機関を含む)とは、性犯罪者に対しての第一選択である『性犯罪再犯防止に特化した認知行動療法プログラム』の専門トレーニングを受けた公認心理師や医師が実際に相談を行っている心理相談機関のことをいっています。


ご本人や両親、家族へ:再犯率の参考データ
平成27年版 犯罪白書(2015年)より、
性犯罪全体の初犯の年齢別では、29歳以下が4割強、30歳~39歳が3割強、40歳以上が2割強となっています。
また、再犯率では痴漢型と盗撮型が群を抜いて多いのが特徴。


痴漢型の再犯率:44.7% 
初回の性非行・性犯罪時の年齢は、29歳以下の者が4割強であるが、40歳以上の者も2割強。 性犯罪前科のある者は85.0%


盗撮型の再犯率:36.4%
初回の性非行・性犯罪時の年齢は、29歳以下の者が約半数。前科のある者は8割弱

未婚の者、大学進学の者の割合が他の類型よりも高い

小児わいせつ型(不同意わいせつ罪)の再犯率:16.1%
初回の性非行・性犯罪時の年齢は、29歳以下の者が約4割、30~39歳以下の者が約2割、40歳以上の者が約4割であり、犯行時の年齢は50歳以上の者が約3分の1を占めている。
対象者と被害者との関係を見ると、1割強が親族であり、3割強が親族以外の面識のある者であった。

(小児強姦型(不同意性交等罪)の場合は、3割弱が親族であり、親族以外の面識のある者は4割弱であった。)

強制わいせつ型(不同意わいせつ罪)の再犯率:16.0%
初回の性非行・性犯罪時の年齢は、29歳以下の者が4割強、30~39歳及び40歳以上の者は、それぞれ約3割であり、中高年になって初めて性犯罪に及んだ者が一定数いる。
 既婚の者の割合は約4割であり、有職者の割合は約8割である


それ以外の犯罪、小児強姦型(不同意性交等罪)再犯率:5.9%、単独強姦型(不同意性交等罪)再犯率:3.6%と続く


氷山の一角初犯の場合にしても再犯にしても、これらは捕まった数なので、捕まっていない方や捕まっていない再犯者の数を加えるとこの数字以上であろうと考えています。
また、再犯を繰り返すことで刑罰が重くなったり、痴漢の場合は、行為の方法などで不同意わいせつ罪が適応される場合もあります。


性犯罪の再犯防止のための認知行動療法プログラムが第一選択
『性犯罪再犯防止を目的に作られた認知行動療法プログラムの受講者は、非受講者に比べ再犯率の低下が国内外の研究によって確認されております。』


さて、性犯罪を行った人は刑罰を受けますが、全員が刑事施設や少年院に入るわけではなく、子供の場合や大人でも起訴猶予(不起訴)、罰金・科料、迷惑防止条例違反など、犯罪は犯したがその後もそのまま社会生活を営んでいる方もたくさんおられます。

刑事施設などに入られた人は、施設で『性犯罪再犯防止プログラム』を受けられる方もおられますが、では、条例違反などで入らなくて済んだ人のプログラムはというと、保護観察所での5回のプログラムがあるのみです。
ただ、最近は大人の場合で『性犯罪再犯防止プログラム』を受けられていない方を対象に、5回のプロクラムを行っている自治体が少ないながらございます。


性犯罪再犯防止の視点で考えると、性依存の度合いや偏った性の嗜好性を持っている人に対しては、5回だけの修正プログラムでは修正が難しい方もおられることも知っておいてください。
ただし、大人の初犯の方や子供で、性犯罪(性非行)をそれほどの回数を行っていない場合は、5回など少ない相談回数でも有効なことが多いです。
実際、当ルームでも5回程度で終了される方が何人もおられます。


加害者の方は軽く考えている(認知の歪み)かもしれませんが、例えば、『痴漢』一つとっても『痴漢』をされるということは、恐怖や不安など被害者の心身に重大な損傷(トラウマ)をもたらします。
なので、刑罰などを受けるのですが、性犯罪行為を行う多く人に性の嗜好性の偏りや依存傾向があり、そのような場合は再犯率が高いとされ、防犯・再犯防止のために適切な再犯防止プログラムや治療に取り組んでいただく必要があります。



性犯罪を行った理由は、性の嗜好性に偏りがある人や性依存の人だけではありません。
1、子供の場合では、親子関係の問題や両親の関係に問題がある家族など、家族関係の問題が発端となっている場合

2、同じく子供の場合で、受験のストレスや学校での同級生・先生との対人関係問題、そもそも学校に行くことへのストレスなどに対して、間違った発散方法として性犯罪・性暴力を行っている人


3、会社・社会でのストレスが問題となっていて、間違った発散方法として性犯罪・性暴力を行っている大人


4、自分も性虐待など虐待の被害者だった人


5、上記の1から4に該当していて、尚且つ知的発達症知的能力障害<知的障害>)や境界知能の人、また神経発達症(ASDやADHD)を併存している人


6、社会性に問題(未熟など)がある人や、子供の時から社会不安症(社交不安症)など対人関係問題で悩みを抱えている人


7、その他にも様々な理由がございますが、この辺にしておきます。




詳しいお申し込み方法等について
プログラム対象者や内容、相談回数、費用からお申し込み方法までは、以下のページをご参照ください。
再犯防止のための認知行動療法プログラム・申込ページ



性犯罪や性暴力の加害者に対する処遇

日本では、2006年より法務省(成人が対象)は、刑罰を与えるだけでは問題解決しないために、性犯罪の受刑者や保護観察対象者の再犯防止のための体系的な制度としての性犯罪者処遇プログラム1(集団での認知行動療法)を実施しております。ただ、プログラムは性犯罪加害者全員が受けるわけではなく一部の加害者が受講している状況です。
1 現在は『性犯罪再犯防止プログラム』


刑事施設におけるプログラムは、再犯リスクや性犯罪につながる問題性の内容・程度、その他のアセスメントを経て密度(プログラム内容や回数など)が決定される。
密度には、高密度,中密度及び低密度があり、1 回 100 分のグループワークを、高密度は標準週2回9か月間、中密度は標準週2回7か月間、低密度は標準週1回4か月間実施している。また、グループワークのほか、個別に取り組む課題があり、必要に応じ個別指導も並行して行っている。
また、知的能力に制約がある人を対象とした「調整プログラム
1」や刑期が短いこと等により受講期間を十分確保できない者を対象とした「集中プログラム2」を行っております。

子供の場合
少年院では、特定生活指導(性非行防止指導)として、認知行動療法を用いた中核プログラムとマインドフルネスやアンガーマネージメント(怒りの統制)、性教育等の各種指導を組み合わせた周辺プログラム、フォローアップ指導を行っております。

次に保護観察所では、コア・プログラム3を2週間に1回のペースで5回行っている。


ただ、問題になるのは出所や退院した後、また、起訴猶予(不起訴)、罰金・科料、執行猶予の処分、子供の性的問題行動など、日常生活に戻った後や性犯罪後も日常生活は変わらないままの場合では、日常生活場面で『認知行動療法プロクラム』を継続したり行うことが必要になります。

というのは、性の嗜好性に偏りや性依存の場合、わかりました治りましたとはならないからです。日常生活の場面でセルフコントロールができるまでカウンセリングを継続する必要がございます。

特に、子供の場合や少年院・刑事施設などに入らない場合は、
『性犯罪再犯防止プログラム』などある程度継続して行うプログラムを受ける機会すらないので、自ら積極的に性犯罪再犯防止に特化した認知行動療法プロクラムを受けていただきたいものです。


1 調整プログラム
知的能力に制約がある者を対象としたプログラムであり、イラスト等の視覚情報やSST等の補助科目を効果的に取り入れるなどして実施する。(全75~90回、10か月)


2 集中プログラム
刑期が短いこと等の理由で通常の実施期間を確保できない者を対象としたプログラムであり、通常のプログラムの内容を凝縮し、短期間で実施する。(全30回、4か月)


3 コア・プログラム
コア・プログラムプログラムは『性犯罪のプロセス』『性加害につながる認知(認知の歪み)』『コーピング(自己管理と対人関係スキル)』『被害者の実情を理解する(被害者への共感)』『二度と性加害をしないために(再発防止計画)』の5つのセッションからなっています。



参考資料
1)刑事施設における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析 法務省矯正局成人矯正課 令和2年3月
2)保護観察所における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析結果について 法務省保護局 令和2年3月27日
3)令和5年版 再犯防止推進白書 法 務 省 令和5年12月



専門プログラムの対象となる性的問題行動は、

精神疾患の診断分類のDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)の『パラフィリア症群※1』に該当するような性的問題行動(犯罪行為)を行っている子供から大人。

『窃視症(のぞき)』
『盗撮』:撮影罪(性的姿態等撮影罪)
『痴漢』
『露出』
『強制わいせつ(不同意わいせつ罪)』
『強姦(不同意性交等罪)』
『下着窃盗』
『児童ポルノ』
『小児性愛』
『家庭内(兄妹間など)でのわいせつ行為(性虐待)』
それ以外にも児童虐待や性暴力、性の衝動性などの性的問題行動で悩んでいる方。


なお、これらは精神疾患に分類されますが、すべて性犯罪であります。

それ以外にも、社会性の問題(未成熟な社会性も含む)や偏った性格、パーソナリティー症などの影響からの性加害行為などの問題も含んでいます。

また、相談のケースとして、性犯罪に加えて窃盗罪(万引き、ひったくり、置き引き、その他)も同時に行っている人や性犯罪行為はしなくなったが窃盗行為だけが残っている方などもおられます。

1 パラフィリア症群
性の嗜好性に偏りがあるために何らかの問題が生じている状態。

2024年の当ルームの新規相談者のデータ

性犯罪加害者で新規に相談(対面とオンラインを含む)に来られた割合です。
また、グラフは子供(~高校生)と大人(大学生以上)を含めた割合となっております。
不同意わいせつ罪には
痴漢で不同意わいせつ罪になったケースも含めています。



大人(大学生以上)と子供(~高校生)の新規相談者の割合
グラフではなく単純に数字だけを表示させていただきました。
大人:48%
子供:30%
軽度の知的発達症(知的能力障害)、または境界知能の子供:9%
軽度の知的発達症(知的能力障害)、または境界知能の大人:8%
神経発達症(知的発達症と境界知能の併存も含む)子供~大人:5%


認知行動療法とは、

性犯罪行為や性依存の症状は、ある出来事に対して、あなたがそれをどう受け止めたか、どのような見方をしたのかなど、認知(物事のとらえ方・イメージ)の仕方によって、不適切な行動や不快な感情、身体反応などが起こると考えます。

性犯罪加害者の場合には、自分の都合よく解釈する癖や時間経過とともに癖の考え方が固まっている(スキーマ)のも事実です。このことを認知の歪みと呼んでおります。

そのような、認知(物事のとらえ方・視覚的イメージ)と行動を修正していくことで、性犯罪を起こさないようにしていく方法が認知行動療法と言われている方法です。
そして、最終的には、あなた自身が認知行動療法を用いてセルフコントロールできるようになることを目指します。


以下には参考例として、痴漢を繰り返し行っている方の認知モデルを載せております。(一つの例でここによって変わります)
認知モデルとは、『状況-認知-行動-気分-身体の状態そして、スキーマ』を用いて、性加害者の内でどのようなことが行っているかを説明する一つ方法です。
もちろん、子供と大人の違いや本人の性依存度、ストレス状況などと『盗撮』『露出』『不同意わいせつ』その他の性犯罪によっても『認知モデル』は変わります。




詳しいお申し込み方法等について
プログラム対象者や内容、相談回数、費用からお申し込み方法までは、以下のページをご参照ください。
再犯防止のための認知行動療法プログラム・申込ページ




子供の問題行動の公的相談窓口情報
こども家庭庁
こどもが抱えるさまざまな困難や子育て当事者の皆さんが悩みを相談できる窓口の情報を掲載されています。
児童相談所をはじめ地方自治体で設置している『相談窓口の情報』の掲載ページです。


少年サポートセンター(警察庁)
子供のことで悩みを抱えているご家族や悩んでいる子ども自身の少年相談窓口の全国情報が掲載されているページです。
サポートセンターは、少年の非行問題やいじめ、犯罪被害等に関する相談を受け、その立ち直りに向けた支援をしています。



大人の刑罰(例)
再犯を繰り返すことで刑罰は重くなっていきます。

迷惑行為防止条例(都道府県によって違いがあります)
神奈川県の場合
・1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・常習の場合2年以下の懲役または100万円以下の罰金


不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)の刑罰は、6か月以上10年以下の拘禁刑
撮影罪(性的姿態等撮影罪の略称)の刑罰は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)の刑罰は、5年以上の有期拘禁刑



参考文献
1、高橋三郎・大野裕監訳『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院 2014/6/30
2、SPLRITS:リカバリーのための性犯罪治療マニュアル 著者・安藤久美子、中澤佳奈子、佐藤道子 星和書店 2024/5/15
3、SPLRITSワークブック 著者・安藤久美子、中澤佳奈子、佐藤道子 星和書店 2024/5/15
4、平成27年版 犯罪白書~性犯罪者の実態と再犯防止~