第147回横浜認知行動療法研究会を終えて
日 時:2022年8月21日(日)午後2時~午後4時
内 容:慢性疼痛に対する認知行動療法
発表者:千田 恵吾と参加者
参加者:公認心理師2名、大学教授・1名、看護師・1名、精神保健福祉士・1名、シニア産業カウンセラー1名
横浜認知行動療法研究会
慢性疼痛に対する認知行動療法
慢性疼痛とは、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)によると『3か月以上持続している痛み』と定義されています。
また、慢性疼痛の方は、いくつかの大規模調査によると、わが国では全人口の約14%から23%と報告されています。
ざっくりと国民の1700万人~2800万人の方が悩まれていることになります。
日本の『慢性疼痛診療ガイドライン(2021年)』によると
認知行動療法/マインドフルネス/アクセプタンス&コミットメント・セラピーの3つの心理療法は、
推奨度:2(弱)
エビデンス総体の総括:B(中)
2とBと思われるかもしれませんが、結構信頼度が高い数字です。
ちなみに鍼灸治療は、
推奨度:2(弱)
エビデンス総体の総括:C(低い)
マッサージは、
推奨度:推奨なし
エビデンス総体の総括:C(低い)
エビデンスって何
医療や心理の世界では『その病気に対する薬や治療方法の科学的根拠』という意味で使われています。
病気に対して治療方法や薬がどのくらい有効かを臨床試験や研究を重ね、出た結果が「エビデンス」となります。
イービーエム(EBM)という言葉もよく使われます。「Evidence-Based Medicine」日本語訳では『(科学的)根拠に基づいた医療』と訳されています。
慢性疼痛の認知行動療法は、日本より海外の方が研究が盛んで、エビデンスもきっちりと出している。
アメリカなどでは、慢性疼痛に絡んだオピオイドの問題や生産性の問題など社会問題となっているために研究が盛んである。
日本は千葉大学 大学院医学研究院などで『慢性疼痛の認知行動療法プログラム』が開発されている。
たぶん、これを読まれている方の中にも『慢性疼痛に認知行動療法』(心理療法を使うの?)と思われる方も多くおられるのではないでしょうか。
慢性疼痛は、その場所(腰痛だと腰)が問題ではなく、痛みを感じるときに脳で多くの部位がネットワークを通じて同時に活動することがわかってきています。(ペインマトリックスやニューロマトリックスと⾔われています)
また、脳画像などでは通常の痛みを感じる脳の領域に変化があったり、関与しなくていい部位と関与してしまったりすることがわかってきて、このように脳の誤作動によって痛みが慢性的に続く原因であると考えられています。
認知行動療法は、痛みに対する考え方や行動を変化させることで脳が正常な反応を行えるようにする方法です。
今回の研究会では、千田が鍼灸師でもあるために慢性疼痛の患者さんも鍼灸治療を目的によく来られます。
ただ、慢性疼痛の方には、説明をさせていただいて基本的には『鍼治療と認知行動療法の併用』か『認知行動療法単独』のどちらかで行っています。
このように日常的に『慢性疼痛に認知行動療法』を用いているために今回はこのタイトルとさせていただきました。
研究会では、千葉大学 大学院医学研究院などで『慢性疼痛の認知行動療法プログラム』を学ぶことにしました。
また、プログラムには慢性疼痛だけでなく慢性疾患全般にも使える技法があったりもするので、途中で慢性疾患に対する認知行動療法に道がそれたりもしながら参加者で学びました。
まぁ、日本ではまだまだ慢性疼痛でお困りの方が、カウンセリング・ルームに『慢性疼痛の認知行動療法プログラム』を受けることを目的に来られる方はいないかな。
たぶん、慢性疼痛でお困りの方は想像すらしていないのではないでしょうか。
あなたや家族、友人で慢性疼痛でお困りの方がおられましたら『慢性疼痛の認知行動療法プログラム』という方法が痛みに有効みたいとお伝えください。