大人(学生も含む)の自閉スペクトラム症:個人も夫婦もまずは特性を理解することから始めます。
自閉スペクトラム症(以後、AS/ASD)で個人的に悩まれている方も、夫(妻)がAS/ASDのために夫婦の関係性やコミュニケーションで悩まれている場合も、認知行動療法や心理相談ではまずは『本人の特性とAS/ASDでない人の特性、そして、その違いを理解すること』から始めます。
※学生も含むとは、認知行動療法では大人だけでなく中・高・大学生も特性を理解することから始めます。
※AS/ASD:ASとは自閉スペクトラムというタイプのことをいいます。困ったり、問題が生じていない場合に使用します。ASDは自閉スペクトラム症ことをいい、ASの後のD(disorder)は障害と訳され、悩んだり問題を抱えている場合に使用します。
あなたはいつ頃・どんな時に周りの人と何か違うと思ったでしょうか。
子供の時から周りに対して何か違和感を持っていたり、友人と付き合うことに疲れていた方、会社で失敗をした時や人と会話をしている時に何か違うと感じていた方、夫(妻)からAS/ASDじゃないのと直接言われている方、子供がAS/ASDであることがわかってた時、自分もそうだったんだと知った方など、いろいろだとは思います。
AS/ASDかどうかを知るには
それには、医師や心理師との面接やスクリーニング検査という簡易な方法でAS/ASDの傾向があるかを調べます。その後、診断が必要な場合など必要に応じてADI-RやADOS-2、CARS2という本格的なテストを行うこともあります。
では、『AS/ASDの人』と『AS/ASDでない人』とでは、特性にどのような違いがあるのか。
認知行動療法では、『AS/ASDの人』と『AS/ASDでない人』の特性の違いを理解する事からはじめます。
理解をしていく過程では、言葉だけの説明ではなく、ホワイトボードやプリント資料などを用いて行っています。理由としては、AS/ASDの人に限ったことではなく、人は言葉に加えて視覚的にも説明を受けことで客観的に理解する事ができるからです。
これはASDの相談だけでなく、うつ病やパニック症などの問題でも同じでホワイトボードやプリント資料などを用いて行います。
また、ホームワークでも、自分の考えていたことなどを書き出す作業を行っていただいたりします。
『自閉スペクトラム症(ASD)の相談と認知行動療法』ページへ
今回は、例として、『人付き合いについての特性』について書いてみました。
『ASDをもつ人』と『ASDをもたない人』ではずいぶん違うことがわかると思います。
なお、『ASDをもつ人』と『ASDをもたない人』それぞれに強みと弱みがあり、どちらが正しいというものでもありません。これは、アメリカの文化と日本の文化がそれぞれが違う文化で、どちらが正しいということは言えないのと同じことです。
ただし、ASDをもつ人が少数派でASDをもたない人が多数派ではあります。これは左利きが少数派で右利きが多数派と同じことです。
実際の認知行動療法では以下の項目についても心理師とプリント資料を用いて検討していきます。
『コミュニケーションの特性の違い』/『切り替えについての特性の違い』/『興味の持ち方の特性の違い』/『感覚の捉え方についての特性の違い』/『ものの捉え方(まとめて考えること)についての特性の違い』/『計画や段取りをすることについての特性の違い』/『はっきりしないことへの推測についての特性の違い』/『行動や気持ちのコントロールについての特性の違い』
AS/ASDの人がすべてが共通しているかというとそうでもなかったりします。
例えば、ある人は『感覚の捉え方についての特性の違い』については、それほどAS/ASDの特性を持っていなかったりする場合があったりします。
人によってさまざまな違いがあるので一つ一つ検討をしていくことになります。人それぞれに性格が違うのと同じようなことです。
また、ADHDや境界知能などが併存している方も多く、AS/ASDとADHDやAS/ASDと境界知能など2つの併存やAS/ASDとADHD、境界知能の3つが併存している場合などがあります。その場合はもっと複雑になってきますので、AS/ASDの特性がADHDの特性で隠れてしまっていたり、逆に合わさることで強く出てしまったりする場合もあります。
併存以外にも二次障害で困られて相談に来られる方が結構おられます。(本人、親が二次障害であることを気づかずに相談に来られる方が多くおられます)
大人の場合、ASDの問題で相談に来られるというより、うつ病や不安障害、強迫症等で相談に来られた方が、実はASDの二次障害だったという方は多くおられます。また、二次障害までは至っていないが、昔から何か人と違うと思っていたり、しんどさが常にあるなどで相談に来られる方もスクリーニング検査を行うとASDであったりします。
子供の場合も、対人交流が活発になる中学生以上になると二次障害として、不登校やうつ病、不安障害、強迫症等が問題が多くなってきます。
すでにASDかなと思って困られている方や困られているパートナーの方は、まずは当ルームに相談にお越しなりませんか。
ひとりで考え込んだり、夫婦関係が険悪な状態が続いていたり、親子関係がギクシャクしたりしている場合は、なるべく早く相談にお越しになられることをお勧めいたします。
こちらのページもご参照ください。
『自閉スペクトラム症(ASD)の相談と認知行動療法』
『自閉スペクトラム症と二次障害の相談・当ルームでは』
参考文献:
ASDに気づいてケアするCBT ACAT実践ガイド
著者:大島郁葉・桑原斉
金剛出版 2020/10/10