心理師・千田の思考「抑うつ状態やうつ病に有効な方法は、認知行動療法や鍼治療など」
『心理師・千田の思考』では私、千田の『専門の心理療法や個人的に関心のあること』や『心理療法以外の専門である鍼灸治療の最新情報』『毎日メールで送られてくる世界の医療・心理の最新論文等の情報で役立ちそうなもの』などについて書いまいります。
今回は、抑うつ状態やうつ病に有効な方法をいくつかお知らせするのもいいかと思い書かせていただきました。
抑うつ状態やうつ病と言ってもどの程度の状態なのかを知る必要があります。
軽度とか中等度、重度など表現されます。それは診断基準の項目がいくつ当てはまっているかによって判断をされます。
抑うつ状態とは
抑うつ状態という言葉は、いろいろなところでよく使われていたり聞かれたりすると思います。抑うつ状態とは、ストレスなどの原因により、精神的なエネルギーや気力・集中力が低下している状態のことをいいます。強いストレスを感じたり、ストレスが弱くても長く続く環境にいたりするとよく起こります。
また、うつ病の診断基準は満たしていないものの、うつ病の症状がいくつか見られるときに使われます。なので、うつ病とは区別されています。
精神状態
気分が憂うつ/意欲や興味がなくなる/思考力や集中力が落ちる/自己評価が低下する
身体症状
睡眠の異常(不眠・過眠)/身体の痛みやだるさ/食欲や体重の減少・増加/女性の場合・生理不順
では、うつ病の判断基準は、
うつ病の判断基準
条件1:ほとんど一日中、ほとんど毎日、2週間以上、条件2と条件3の症状があり仕事や家庭生活で支障がある。
条件2:●『抑うつ気分』/●『興味または喜びの喪失』のどちらかまたは両方が必ずあること
条件3:
1・著しい体重減少、あるいは体重増加
2・不眠または睡眠過多
3・落ち着かないことが行動として出てしまう。歩き回る等又は行動すること自体が少なる
4・疲れがひどくて、何もやる気がしない
5・無価値観、罪責感(自分が役に立つ人間と思えない、好かれていない等)
6・思考力や集中力の減退(低下)
7・死についての反復思考
条件1と条件2が当てはまり、尚且つ条件2と条件3の足した数が5つ以上の症状がある場合に『うつ病』と診断されます。
軽症のうつ病とは、日常生活においてペースや集中力、生産性などが落ちてはいるものの、なんとか会社なども休まず続けられている状態。
中等度のうつ病とは、条件1と条件2が当てはまり、尚且つ条件2と条件3の足した数が、6~7つの症状が当てはまる場合。働いている方であれば休職を勧められる。
重症のうつ病とは、条件1と条件2が当てはまり、尚且つ条件2と条件3の足した数が、8つ以上の症状が当てはまる場合。
なお、これはあくまでも目安であるということと、実際の診断で個数で判断しているかというと決してそんなことはありません。
ただ、治療方法で軽症に有効や中等度以上に有効などと説明がされるので一つの目安としてください。
診断基準やそれぞれの状態をより詳しく知りたい方は以下のページを参照ください。
うつ病に有効な方法
休養:一休みがとても重要<脳(身体)の疲労を取ることがはじめに行うこと>
鍼治療:身体症状が中心のうつ病には有効な方法
運動療法:脳に有効な方法<BDNF(脳由来神経栄養因子)、モノアミン(セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン)が増加>
認知療法・認知行動療法:お薬の治療と同等の力がある心理療法の一つ
お薬:お薬については心理師であるので説明は致しておりません。
休養
心が疲れたとか精神的に参っているとかいうと、あいまいというかよくわからなくなってしまいますが、抑うつ状態やうつ病は脳という神経の塊(身体)がストレスで疲労してしまっている状態。だから、医師や心理師は「まずは休みましょう」と言う。
写真のようにトレーニング(身体へのストレス)で筋肉(身体)が疲れたら、ストレッチやマッサージなどで身体を休めることが必要なのと同じです。
鍼治療
鍼治療は軽症から中等度で『それほどマイナスな考えが強くなっていない場合』には有効な方法です。仕事や対人関係問題などのストレスによって、自律神経のバランスが乱れている時に起きる身体症状(全身の倦怠感、疲労感、頭重感、息が詰まる感じふらつき、動悸、胃のもたれ、胃痛、肩こり、その他全身症状)にも有効な方法です。
皆さんは鍼治療と言うと「このツボが」というように、東洋医学とか中国医学をイメージされる方が多いと思いますが、私は現在医学的鍼灸という立場で日々鍼治療を行っております。
現在医学的鍼灸(現代の医学理論(解剖学・生理学・病理学・その他)の視点で行う方法。
『エビデンス(科学的根拠)』に基づいて行われる鍼灸治療のことをいいます。
うつ病の時には前頭前野の血流が低下していることがわかっています。
a、四肢末端(肘から先と膝から先)に鍼を行うことで脳血流改善することがわかっています。また、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を促すこともわかってきております。
b、耳や眼窩上神経(ツボ名では陽白と言われる場所)、眼窩下神経(ツボ名では四白と言われる場所)、オトガイ神経(ツボ名では大迎と言われる場所)に鍼を行うことで脳血流改善することがわかっています。
うつ病に対して鍼治療効果の研究を目的に、NIRSという機器(頭に付けている機器)で脳血流量測定を千田が精神科医の協力のもと約1年6カ月研究を行いました。
研究結果は学会で発表もさせていただきました。
掲載許可済
※「マッサージはどうなの」と思われた方もおられるかもしれませんが、身体疲労(脳以外の身体・例えば、肩こり)には有効な方法の一つですが、うつ病のような精神(脳)疲労には有効な方法とは言えません。
こちらのブログもご参照ください。
心理師・千田の思考「ストレス疾患やうつ病に鍼治療は効果があるのか」
運動療法
うつ病への運動療法の研究がたくさんなされています。ただ、研究の結果は『効果がある』『効果はない』など、今のところまちまちではあります。ただ、有酸素運動においては軽度から中等度のうつ病には効果があるという研究結果が多くあります。
私も実行可能な方には、ウォーキングやジョギングなど有酸素運動を汗がにじむ程度(中等度の負荷)の負荷(スピード)で約30分間を週に3回を目安に行っていただいたりします。もちろんいきなり30分間を3回というような課題は出しません。徐々にです。
ただ、運動療法は続けていただくことが難しいく、途中でやめてしまう方が結構おられる。継続が難しそうです。
また、運動療法はうつ病だけでなくこのような研究発表もつい最近ありました。
山口県立大学/山崎 文夫氏(看護栄養学部 教授)のグループが、冷え症の若年女性を対象に、ジョギングなどの有酸素運動介入で、睡眠の質を改善し、冷えによる不定愁訴を減少させるかどうかの検討を行った。その結果、短期の有酸素運動は末梢四肢冷感症状を緩和し、主観的な睡眠の質を改善した。と発表されております。
認知療法・認知行動療法
1970年代には、その当時の薬と同等の効果があるという研究結果を発表されて以来、その後も様々な研究を繰り繰り返し行われている方法です。
うつ病に対して『エビデンス(科学的根拠)』ある心理療法の一つです。
うつ病の治療において、お薬の治療と同様に認知療法・認知行動療法も第一選択(一番はじめに行う方法)の方法であると言われております。
認知療法・認知行動療法とは
心の問題や症状は、ある出来事に対して、あなたがそれをどう受け止めたか、どのような見方をしたのかなど、『認知(物事のとらえ方・視覚的イメージ)』の仕方によって、不快な気分や問題行動、身体反応などが起こると考えます。
そうした、『認知(物事のとらえ方・視覚的イメージ)』と『行動』を修正していくことで、ネガティブな気分や身体反応の解決を目指していく方法のことを『認知療法・認知行動療法』と呼んでいます。
図はうつ病の状態を認知行動モデルで表したものです。
なお、実際のカウンセリング場面では、『状況・環境』『認知(物事のとらえ方・視覚的イメージ)』『気分』『行動』『身体反応』それぞれご本人の具体的内容を記入して説明いたします。
認知療法(認知行動療法)では、ネガティブになっている『認知(とらえ方や考え方)』と動けなくなっている『行動』の修正を行うことで問題を解決していく方法です。
ちなみに、鍼治療は『身体化(脳)』にアプローチをしている方法で、運動療法は『行動』課題を行うことで『身体化(脳)』に影響を及ぼしている方法です。
詳しい認知療法・認知行動療法の説明は、以下のページをご覧ください。
認知療法・認知行動療法
カウンセリング・ルーム:トップページ
うつ病については、2週間以上症状が毎日続いている場合に診断されるということは、ストレスやプレッシャー感じ始めて1週間ぐらいたったところで、このストレスやプレッシャーは結構続きそうだと思ったら、まずは、鍼治療か認知行動療法を受けるのがいいのではないかと思います。
この段階で対応しないでおくと、お薬が必要にレベルになる可能性が高くなります。
最後に一言、抑うつ状態やうつ病、もう一つ付け加えると適応障害は、『心が弱いからなるわけでも、精神が弱いからなるわけでもありません』脳という身体が疲れたと言っているに過ぎない。だから、あなたは心が弱いわけではないということは言えます。次回説明します。
解決に向けて当ルームに一度、相談にお越しください。
当ルームでは、対面相談とオンライン・カウンセリングで相談を行っております。
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参考文献:
A two-week exercise intervention improves cold symptoms and sleep condition in cold-sensitive women.
Fumio Yamazaki, Kana Inoue, Nanako Ohmi, Chika Okimoto
Journal of physiological anthropology. 2023 Sep 29;42(1);22. pii: 22.